[toppage]


特別企画

■おやすみICQのあとがき■
-
 say good-bye and hello -

 


 

 

 2年以上前に書いていたことを製本するに至った経緯というのは「まえがき」にも書いたことだが本当に様々な紆余曲折があったからである。その大きな理由の一つが、ふりかえるにこのコーナーを書いていたときが本当に楽しく私が毎日を過ごしていたことであろう。それは、羨望なのか、見えるものが増えた結果の動揺なのか、今現在の不安定な状況の中、毎日、毎日「ファイナルアンサー?」と、自問自答(もしくは、知らない誰かに問いつめられている)を繰り返していることからの現実逃避なのかは分からない。 

あれから2年。読み返せば、当時よりもより楽しめそうなものを書くことができるかもしれない。しかし、いずれにしても、あのとき時間を持て余していた友人たちの大半はもうネットワークの世界に毎夜のごとく常駐しているということはない。そして、その中には知らず知らずのうちに傷つけてしまったり、連絡がとれなくなったり、なんとなく交流が少なくなっていたりもした人もいる。「絶対に仲良くしたい人がいたら連絡を絶やすものか。」と誓ったことを覚えている。そして、数年経った今このことに妥協や修正するための論理付けを行うはできようが、他方で「信念は、当時の赤裸々な感情なのだからずっとそのままで持ち続けよう。」と誓ったことが私を苦しめる。その解答は、私でない誰かならば実に簡単なものなのかもしれないが、私には分かろうとしないことらしい。当時の内容を読み返してみて総じていえることは、様々な「確信犯的」行動について憤っていたことではないかと思う。こうして、ライブの長々しいMCのように「まえがき」・「あとがき」を延々と書き続けること自体もある意味「確信犯」であることには変わらないので、当時の私ならば憤っていたのかもしれない。しかし、やはり「まえがき」で書いたことだが、私にとってのメインコンテンツはむしろ、解説やイラストなど本文以外の点にあるつもりでいるのだから仕方がない。私にとっての本書の意味は、前述の分かろうとしない種々の問題を放置することの免罪符であり、私自身が築きあげようとする友人関係の象徴に他ならない。異論はあろう。しかし、私は切磋琢磨的な友人関係は多くの場合望まない。特徴をいえば、日々の暮らしに疲れたりしたら繋がったり、「なんとなく」に接合されたりするようなものなのだと思う。(一般に言われるような関係も含まれる点も当然ある。)一見、「おやすみICQ」の内容自体からはそんなことはうかがい知れないことかもしれない。しかし、「○○は大きい。」というときに「何と比べて?」と返事をしたり、書き綴ったりする私はもはや脱日常的であり、私と繋がった人もまたしかりなのである。そして、そんな脱日常にふれるきっかけは「なんとなく」である。

 

<中略>

 

こうして実際の作業を振り返ってみると、2年前、私は「おとなとこども」と題して、約20人に原稿を依頼したが、ウェッブ上で展開するのとはその作業コストには雲泥の差があった。その読みの甘さが完成を遅らせた原因であるのだが、これほど多くの方にコストを強いることは後数年できないかもしれない、とさすがの私も躊躇うほどである。(そして携わった多くの人が躊躇ってほしいと考えていると思う。)大丈夫。次の企画を始めたとしても、一年は続けるつもりなので次回の製本化はまだまだ先のこと。意外に大変な作業であったが、いくら長時間を作業をしていても私は本当に楽しかった。きっと、あれからのさして満足のいかない結果を生み出した2年間はこのときのためにあったのではないかと思うほどであった。互いに関係性を深めあっても、その距離は「0」に近似することしかできないもどかしさ、知り合うきっかけと現在の関係との因果の無さ、携帯やPCからアドレス・番号を消去してしまうと実は切れてしまう関係を裏付けるものの空虚さ、なぜか3者間でしか完成しない関係性の奇異さ、等々、それぞれがさらに論理的因果と離れたところで、実は模様となって魅力ある関係性を築いている。それは、水面に落とした絵の具の作り出す模様のように唯一無二であり一般化になじまない。その1つ1つが私の宝であり、見ていて、考えていて、癒される。毎日の「おやすみ」の言葉はまさにこのことの象徴であった。今日より、よりよい明日の訪れを待ち続ける不安の中で、手で掴めもしない、目で見えもしない関係性は「おやすみ」で確認したつもりになれることを知っただけでも、2年の距離を感じずにはいられない。

目で見えないことほどかけがえなくて、強力で、癒されて、心強くて、都合が良いものはないと思う。本書を閉じた後にそんな目に見えないものが浮かんでくるならば、今回本書を制作した意図は達成されるのかもしれない。

 

 

20021230

kiyo

 


 

 

 



by kiyo